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現有システムから移行できない新システムは動かないB社ではいつの間にか現有システムの再構築が忘れられ、パッケージ導入を目標にすべての改革チームが走ってしまった。
そこには導入業者の利害、すなわち「パッケージが動けば責任を果たしたことになる」、が優先されたことは否定できない。
C社ではワーキング・グループの活動の初期に現有システムの移行を意識したが、業務改革に重点を置きすぎ、途中で移行の方策を立てたことを忘れてしまった。
パッケージよりもよく自社に合うソフトウェアが出来上がったところで、現有システムからの移行計画の甘さが様々なトラブルを招き、本稼働が4カ月遅れた。
ソフトウェアの内容はデータを処理する「プログラム」だけではない。
「データ」がなければ仕事はできない。
そのことはC社が痛感したところである。
パッケージはプログラムを提供してくれるが、データはユーザ企業が作らなければならない。
コンピュータ利用が始まって30年以上たった現在では、大量のデータが「現有システム」に蓄積されている。
これを新システムに円滑に取り込むことができなければ、新システムが期待どおり動くはずがない。
B社を指導した導入業者は、パッケージをユーザ企業に合わせて微調整する「力スタマイジング」あるいは「チューニング」が自分達の任務であると考えていたきらいがある。
動くプログラムをユーザに渡しただけでは、責任を果たしたことにならない。
データ作りは「ユーザの責任」と称して、現有システムからの移行不可能な仕組みを押しつけるのは迷惑千万である。
パッケージ導入は必ず現有システムの構造に影響を及ぼし、再構築を余儀なくさせる。
したがって、パッケージ導入は「現有システムの再構築」という形のシステム・インテグレーションにほかならない。
導入業者がこの点を誤解していたことがB社の混乱の最大の原因である。
本末転倒「パッケージに合わせて業務を改革する」B社の混乱を拡大したのは、パッケージ業者が主張したこの言葉である。
業務の方法が悪いために経営が悪化している企業はいざ知らず、B社のように厳しい経営環境の中で曲がりなりにも業績を維持している企業は、それなりに業務の方法を工夫している。
これをパッケージに合わせるのでは「改悪」になってしまう。
B社が体制転換を始める頃、コンサルタントはアメリカの某ERPパッケージ業者の副社長と日本の製造業のニーズについて話し合った。
B社の業務の特徴をいくつか紹介したところ、「それは現在のどのパッケージにも組み込まれていないが、マス・カスタマイゼーションを指向している。
顧客が要求している事柄である。
今後の商品整備計画に組み込みたい」との答えがあった。
半日の会談の後「日本の製造業のパッケージに対するニーズはワールドワイドのニーズと一致している。
むしろ参考になることが多い」と日本の企業が先行していることを副社長は認めた。
日本の企業は新製品開発力においては欧米の企業におよばない傾向がある。
しかし、製品の改良と、生産技術面では欧米の企業をしのいでいる。
したがって、ERPパッケージに組み込まれた生産管理業務ノウハウは日本の製造業にとって必ずしも参考にならない。
日本の大手ユーザが日本向けの機能を要求し、パッケージ業者もそれを受け入れている理由はそこにある。
この要求に基づく「パッケージの日本化」には時間が掛かる「T生産方式」や「製番管理」を表面的に取り入れるだけでは、パッケージの内容が矛盾する恐れがある。
パッケージの納期について「日本化」の遅れによってB社は資料が手に入らず、業務改革チームが混乱した。
この問題に関して言うと、パッケージの選択を誤ったと言わざるをえない。
最初から人事・給与や経理・会計に絞っていれば、このような混乱は起きなかったであろう。
日本化が遅れている場合、2000年問題のように期限のある課題の解決手段としてパッケージを利用することは危険である。
それはソフトウェア開発の納期に関する日本と欧米の認識の違いに根ざしている。
狩猟民族は季節の移り変わりに応じて計画的に移動するが、途中で様々な障害に合うため、時期はかなりおおざっぱである。
欧米のパッケージ業者はビジネス・プランを立て、計画的にパッケージの改良を行なっている。
途中で有力な顧客からの要請があればビジネス・プランを変更し、重要な課題を優先する。
日本企業にコミットした納期が遅れても、会社の方針が変わったから仕方がないと担当者から答えが返ってきた苦い経験をコンサルタントはいくつも持っている。
重要な機能の担当者が兵役や休暇のためにパッケージの開発が遅れても、ビジネス・プランがキャンセルされない限り、担当者達は平然としている。
農耕民族は種まきの時期に関して敏感である。
数日遅れると作物の出来が悪くなり、飢えに苦しみかねない日本企業の納期に関する厳しい感覚は、欧米のパッケージ業者には理解され難い。
機能名でパッケージを選んではならないB社の業務改革活動推進者は豊富な機能が揃っているので、安心してパッケージを選んだようである。
「2大パッケージ」と呼ばれるほど実績があることも災いした。
「機能が達成されるなら、手段は何であっても構わない」と考えるのは無謀である。
顧客や取引先との間で行われる微妙な駆け引きや、協力関係の維持などのために、情報システムはビジネスの事実に即したデータを供給しなければならない。
データ仕様がB社のビジネスの事実を捕らえるように設計されていなければ、パッケージが提供する「データ処理機能」は無意味である。
B社のビジネス内容はパッケージが想定しているよりも遥かに複雑であった。
データ・モデルを眺めれば、構造が違っていることにすぐ気付くはずである。
しかし導入業者は「パッケージに業務を合わせる」ことを要求し、傷を深くしてしまった。
多くのパッケージはデータ仕様を顧客に合わせる「チューニング機能」を用意している。
しかし、データ構造が違っていれば、ユーザ企業は「外付け」でカスタマイズするか、パッケージの仕様を断念するか、のいずれかを選ばなければならないもともと、「機能」は暖昧になりがちである。
同じ機能名でも機能範囲が異なっていることが多い。
また、異なる機能名で、範囲が大幅に重複していることがある。
一つの機能をどう定義し、その内容をどのような考え方で部分機能に分割するか、人によって違うことが多い。
期待する機能が含まれていると思っても、実際に使おうとすると期待はずれであることも珍しくない。
機能名だけでは誤解の余地が多すぎる。
現在のパッケージに関する国際標準は、パッケージを部品化し、各部品をオブジェクト指向技術で実装するよう提唱している。
後で詳しく紹介するが、この技術であれば、データ仕様と機能が一体化されており、誤解の余地が少ないよい構造のパッケージを選ぶことが賢明である。
パッケージの導入方法を改革するコンピュータ関連の新聞雑誌の記事を読むと、パッケージ導入を検討する企業はいまも少なくない。
情報技術の動向としても、ソフトウェアの再利用は必須である。
今後のアプリケーション・システムの構築方法として、市販の商品を利用して組み立てる傾向が強まるであろう。
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